アパート共用廊下の補修工事例を解説します。今回の工事では床面全体を左官をしてから長尺シート(タキストロン)を敷設しています。左官を加えることで廊下床面が平滑化されるのでシート仕上りがアップします。※左官を省略して費用節約することもできます。
この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。
共用廊下の劣化状況(改修工事前)の写真
「鉄骨製の共用廊下がボロボロになった・・・」とお問合せをいただき、現場調査時に撮影した写真です。鉄骨はあちこち劣化してサビ穴が空いていましたが、その原因はこの廊下の床面にあります。
廊下床モルタルはクラック(ヒビ割れ)発生のほか、鉄骨付近のシールの劣化(硬化、割れ、破断)など様々な老朽化が進んでいました。ここから浸水してしまうと共用廊下の鉄骨の腐食が始まります。
鉄骨のサビに目を奪われて補修をしても、床面のトラブルを改善しない限り鉄骨補強はいったんは改善しますが、老朽化は止まりません。
廊下の床面をよく見ると、いくつも細い筋が見つかります。これが床面モルタルの老朽化が起因する「ヒビ割れ」です。
ヒビから浸水した雨水がデッキプレート(鉄骨)に腐食ダメージを与えていきます。このまま放置をしていると、上記イメージ図のように廊下を支える鉄部が部分的に欠落し始めて、最終的には廊下床の崩落事故につながるケースがあります。
参考:アパートの外階段崩れたか?2人がけがして病院に(NHK首都圏NEWS WEB)
追記(令和4年2月10日)
令和4年に国土交通省が「木造の屋外階段等の防腐措置等ガイドライン」を提唱して、鉄骨設備への耐水措置を求める通知をしました。
床面を左官工事で整えていく
傷んでしまったモルタル床面を雨水から守るために長尺シート(タキストロン)を敷設するのですが、その前の地肌(床面)に行うモルタル補修を「下地調整」といいます。
下地補正では主にクラック(ヒビ)埋めを行い、シートが効果を発揮しやすいように作業するものですが、既存の床面の水勾配が波打っていると雨天後に床に水たまりができあすることがあります。
今回は工事費用を増額して、廊下床面全体を左官工事で整えます。左官で床面を均すことで水たまりが生じにくくなります。
まずは、ボロボロに割れているモルタルの脆弱部を斫って(はつって)撤去、解体します。斫った欠損部にモルタルを充填して下地調整がスタートします。このような左官工事の間は建物の住人の方々には通行のご不便をかけてしまいますが、資材や養生、作業時間を工夫しながら、できるだけご負担にならないように左官工事を進めます。
金コテ(かなごて)を使って丁寧に左官補修していきます。
廊下の床面全体に左官工事を行いました。廊下にあった「ヒビ割れ」の全ての不安が解消されて、かつ床面が平滑化されています。
廊下改修工事での左官工事の役割(コスパ)
今回の改修工事では床面全体を左官工事しましたが、廊下改修工事における床面の左官工事は必須項目とは言い切れません。左官工事は廊下の構造によっては作業できなかったり、鉄骨強度に影響を与える可能性、工費のコスパなど、状況に応じての選択が求められるからです。
鉄骨の老朽化を軽減するために追求すべきことは「人的被害の回避」です。そのために鉄骨の溶接補強や長尺シートによる雨水対策を行うわけですが、これらの工事の選択肢において左官工事は優先順位の高いものではありません。
弊社はなんでもかんでも完璧にやることが改修工事の正解だとは思っていません。最低限の利用水準を満たすことを優先にするので、手を付けないで我慢していだく部分もあります。
左官工事のないタキストロン工事について、下記のような記事も書いています。
鉄骨を雨水から守る「長尺シート」がおすすめ
廊下床面の左官工事で下地調整ができたら、長尺シートの敷設です。現地にロール状に巻かれたシートを搬入して仮り敷きしていきます。
廊下にある障害物(柱やガス管など)に合わせてシートをカットして合わせていきます。下地調整がしっかりできていれば、このボリュームの長尺シート工事であれば一両日で作業が終わります。
シートの継ぎ目に溶接工具を使ってシート同士を溶接します。写真は、専用の熱風溶接機を使った溶接作業です。
長尺シート工事をして、強度も見た目も改善されました。
鉄骨補強編。溶接で強度復活。
このページでは左官工事やシートの話がメインなので省略しようと思いましたが、やはり鉄工所としてはサビ補強工事はご紹介しないと・・!
廊下の柱の一部に写真のような大きなサビ穴があります。さらに廊下の外周部の鉄骨(胴差鉄骨)には補強プレートを用意して溶接補強します。
廊下の大事な構造部である胴差鉄骨の腐食は、オリジナルで製作した補強プレートを使って補強溶接しています。
鉄柱にあいた大きなサビ穴は、新たな鋼板を被せて溶接補強しています。
廊下を支える鉄柱は、雨水が貯まってタンクのようになっています。
鉄柱の根元に小さな穴をあけると、貯まっていた雨水が噴き出します。
鉄柱の劣化具合によって補強方法も様々ですが、全体的に劣化してしまった鉄柱は交換するか、外から鋼板を被せて溶接補強します。
さらに、階段の昇り降り時にあった「ぐらつき」も専用のパーツを作って補強することができます。これだけでかなり安定します。
このページでは、共用廊下を改修するための鉄骨溶接補強と、長尺シート工事、左官工事をご紹介しました。工事の方法や選択肢はその建物やオーナー様の運用方針によって様々です。
共用設備にとって、利用者様の安全利用は絶対条件です。怪我などの事故(人的被害)が起こったら大問題です。そうなる前に弊社までお気軽にご相談ください。
参考:国土交通省からも提唱、外階段や廊下には耐水(防水)処理が大事