アパート廊下の現状(鉄骨サビ度:★★★★☆)
東京都内のアパートオーナー様から「鉄骨廊下が錆びて補修したい」とご要望をいただきました。調査すると廊下鉄骨の柱や梁のダメージはかなり深刻。しかし、廊下の手すりには経年劣化程度のサビしかありません。この鉄骨廊下の問題点は床面モルタルの劣化による雨水の浸入でした。
アパート廊下の補修方法:
補修方法は、以前の補修工事で増設された補強梁を活用して廊下の奥行全体にこれを拡張。廊下の骨組みとなる鉄骨を増やして全体の強度を復旧して、鉄骨廊下の【床下】を修復します。そのあとは、今回の腐食の原因であるモルタル劣化を補修すべく廊下の【床上】にタキストロンを施工します。これで鉄骨強度の復元と今後のサビ予防ができます。
この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。
目次
鉄骨廊下の「上半身(床上)」と「下半身(床下)」
現地の鉄骨廊下の様子です。さっそく調査にきました。
階段や廊下の手すりの錆びダメージはさほど見受けられませんでした。しかし、廊下の鉄骨(柱や梁)がかなり錆びてボロボロになっていました。つまり「廊下の上半身は問題なく下半身に問題がある」という状況。
錆びの原因も検討しつつ、まずは「廊下の下半身」の腐食を検証していきます。
デッキプレート(床下)の強いサビ
鉄骨廊下の床下を見上げて撮影しています。廊下の床底となる部分に凸凹した鉄板があります。これを「デッキプレート」といいます。廊下の床モルタルを支える重要なパーツです。このデッキプレートが全体的に錆びていますが、写真を見ると特に強いサビが見えますね。
しかも厄介なことに、この強いサビが廊下の柱に繋がっています。廊下を支える鉄柱にサビが浸食することは、廊下全体の構造に影響が出るので危険です。
ところで、これが当社の工場で使わているデッキプレートです。デッキプレートは凸凹形状に曲げられているのため薄い鉄板でも強度を維持できます。この強度を使って上から打設されるモルタルを支えています。
さて、お問合せの廊下のデッキプレートがここまで錆びたのか。次の写真に答えがあります。
デッキプレートの腐食の原因は「床上」でした
廊下の床上モルタルの写真です。
モルタルが劣化してヒビが入っているのがわかります。また、手摺の支柱が埋まっている部分にもすき間ができています。ここが廊下の鉄骨にダメージを与えている大きな原因。つまり「雨水の浸水ルート」です。ここから浸水した雨水が下で支えるデッキプレートに到達して錆びさせています。
デッキプレートで発生した錆びはドンドン広がって、廊下の柱まで到達しています。結果、廊下の柱も腐食を始めるので廊下全体の強度に支障が出てきます。これが鉄骨廊下の床下だけ問題が出るからくりです。
この鉄骨補修をしないまま、上から塗装しているだけの建物をよくみますが、正直申し上げて何も解決していません。「鉄骨が元気なふり」を装っているだけです。鉄骨のサビはさらに鉄骨を蝕んでいきます。
鉄骨廊下補強~床下の鉄骨補強編~
この廊下鉄骨には補修歴がありました。以前の補修工事で部分的に「補強梁」(強度補強を目的とした梁)を増設していました。今回の補強工事ではこの「補強梁」をさらに延長、増設して廊下全体を支えるために再活用します。
鉄骨補修工事では大きくわけて4つの補強を行っています。
1.既存の「補強梁」を延長して廊下全体を補強
2.腐食したデッキプレートを鉄板で補強
3.2で補強したプレートも含めて、デッキプレート全体をささえる補強梁を追加
4.3の補強梁を支えるブラケット補強パーツを増設
1~4の工事はそれぞれバラバラに補強しているのではなく、それぞれが連結して廊下の骨組みをしっかり補強しています。
これで鉄骨補強工事は完成。廊下の床下(下半身)の錆びダメージは解決しました。
鉄骨の補強梁を通す工事はほかの現場でもご紹介しています。
参考:アパート廊下の鉄骨補強で「梁」を増設している工事
鉄骨廊下補強~床上の耐水作業編~
こちらが現状の廊下の床上です。モルタル床が見えています。ぱっと見ではわかりませんが、よく見ると小さなヒビがいくつもあって、吹き込んでくる雨水が浸入し放題になっています。
モルタルのヒビを修繕しないと今回の鉄骨補強の効果が完全に発揮されないままになってしまいます。
雨水からモルタル床を守るためにタキストロンを施工して、雨水の浸入ルートをブロックします。
タキストロンが施工されました。端部のコーキングも行って、床面への雨水浸入をブロックします。また、廊下の雰囲気も大きく変わるので、入居者様にも好印象にもなるので一石二鳥です。
また、床に接する鉄柱の周囲もすべてコーキングでシール処理します。廊下に停滞した雨水は逃げ場を失い、鉄骨はサビのリスクを大幅に回避できます。
結果的に雨水が廊下に残りますので、たまに掃き掃除をしていただければと思います。もちろん、水勾配をつけて排水経路を作ることもできますが、費用対効果の観点からそこまでやらないケースが多いかもしれません。
アパートの鉄骨廊下を「床下(鉄骨補強」「床上(耐水処理)」でしっかり補修できました。
改修工事は「残りの維持年数と人的被害リスク」「工事予算と優先度」「選択と集中」が工法の分かれ道になります。建物資産を維持するための補修工事は当社にご相談ください。