この記事を読んでいただきたい方:
既存のブロック塀を交換できない事情があるオーナー様にだけお役に立ちます。
ブロック塀の現状(鉄部サビ度:★★★★★)
「ブロック塀がグラグラして不安です」と建物オーナー様からお問合せをいただきました。「ブロック塀を解体すると、その間は不用心・・。御社なら補強工事ができるとHPで見たので」とご相談いただきました。
ブロック塀補強の長所と短所:
オーナー様のご希望である「ブロック塀は交換せずに補強して再利用する」ことをゴールにした補強工事です。ブロック基礎を頼りにせずにブロック塀を補強する工夫として「新たに設けた基礎を補強の基点にする」工法をご紹介します。長所は「解体しないから防犯性、プライバシーが守られる」こと。短所は「通常のブロック塀交換工事より高額になる可能性がある」ことです。
この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。
目次
ブロック塀がグラグラする原因は鉄筋強度ダウン
ブロック塀はお隣との境界や、面している道路に対して立っています。
ブロック塀のぐらつきの原因の多くは、ブロック塀の「背骨」となる内部の鉄筋強度ダウンです。経年劣化によってブロックの中の鉄筋が腐食して強度がなくなり、結果的にブロック塀がぐらぐらします。
このブロック塀をそのまま活用して延命利用するには「ブロック基礎」が重要なポイントになります。ここを基点に補強工事をするからです。今回の記事では「ブロック基礎も老朽化して補強の基点にならない」ことを前提にした補強工事です。
【参考】「ブロック基礎」の劣化がなければ、ブロック基礎を起点に補強します。
ブロック塀をさらにいじめる「土圧(どあつ)」
ブロック塀の断面イメージ図です。
向かって右側がオーナー様(お施主様)の敷地で、向かって左側が隣地です。今回の現場はブロック塀を挟んで地面に高低差(約1M)がありました。
地面に高低差があるということは、低いほうに土が流れようとする「土圧(どあつ)」を支えなくはいけません。ブロック塀に過分な荷重ストレスを与えています。
新たな基礎を作って、そこから鉄骨補強しよう
既存のブロック基礎に頼らず、新たな基礎を基点として、ぐらぐらする(土圧に苦しむ)ブロック塀を鉄骨で補強するプランです。
この工法のメリットは下記です
・ブロック塀を撤去しないで補修工事ができる
・ほとんどの補修作業がお施主様の敷地内で完結する
・お隣さんへのご迷惑は最低限で済む
デメリットは下記です
・ブロック塀の劣化の進行を抑えるものではない
・場合によってはブロックを積み直す方が安価
補強工事のイメージです。いよいよブロック塀補強工事の開始です。
ブロック塀の手前を掘削する~地中障害あり~
ブロック塀補強の基点となる「新しい基礎」を設けるために掘削(穴掘り)を行います。
地面を掘削すると用途不明な配管や、大きな樹木の根っこ、以前の基礎工事の跡が出てきたりします。これを「地中障害」と言い、基礎工事ではこれらの想定外な状況に応じて作業を進めなくてはなりません。「新しい基礎」は一定のピッチで埋設される必要があります。
ブロックの高さは20センチなので、写真のように60センチ掘削したことなります。場所によっては1M以上の掘削が必要になります。
銀色に見えているのはスパイラル管を切断したものです。これを掘削した地中に埋めます。掘削した残土が山のようになっています。外構屋さんが頑張ってくれたました。
スパイラル管を埋設する穴です。軽く人が隠れてしまうほど深い穴もあります。穴の深さが一定ではない理由は、既存の地面の高低差があるからです。
ブロック塀を補強するH型鋼の搬入
予め工場で加工していた「補強鉄骨」を搬入してクレーンで吊り上げます。今回の補強鉄骨は構造物工事でもよく使われるH型鋼を使っています。溶融亜鉛メッキを施しており耐候性も万全です。今回の工事のために60本近い補強鉄骨を搬入します。
地中に埋めた補強鉄骨でブロック塀の傾きを抑える
ブロック塀の上部に設置した固定パーツとH型鋼の補強鉄骨を溶接します。
前述のように、今回の補強鉄骨はすべて溶融亜鉛メッキを施しています。溶融亜鉛メッキは強い耐候性があるため酸化(サビ)を防ぐ効果があります。現場で溶接した部分も亜鉛メッキ補修をします。
補強鉄骨の脚もとは地中のスパイラル管の中に入れておきます。
「ブロック塀」「スパイラル缶」「補強鉄骨」が写真のような組み合わせになります。このあと、スパイラル管の中にコンクリートを流し込みます。コンクリートが充満されたスパイラル管がそのまま「新たな基礎」になります。
ミキサー車でコンクリート埋め込み作業
打設するコンクリートは大量に必要なため、ミキサー車でコンクリートを搬入して、スパイラル管に注入します。
コンクリートの注入作業。ミキサー車からコンクリートが送り込まれ、それぞれのスパイラル管に運ばれます。
スパイラル管いっぱいに注入されたコンクリート。「新たな基礎」の完成です。ひとつが重量として数百キロ近くになるので、ぐらつくブロック塀を抑えこむには十分の重量になります。
ブロック塀全体に「新たな基礎」「補強鉄骨(H型鋼)」を施工して補修工事は完成です。
この工事は隣地とのプライバシーを保ったまま進められるのでオーナー様のご負担を大幅に軽減できます。「ブロック塀がグラグラしてるけど交換は難しい・・」とお困りのオーナー様にはぴったりなアイデア工事です。お気軽にご連絡ください。
参考:建物壁面とブロック塀を緊結して傾きを抑える施工例