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外部鉄骨の維持には塗装皮膜?雨水対策?

コラム的な記事を書いてみようと思います。

ある日こんなお問合せをいただきました。

「外階段の老朽化について、
定期的な塗装をしていれば雨水対策はしなくていいんですか?」

外部階段

素朴なご質問でしたが、私たちにとっては建物オーナー様のお悩みにもっと寄り添わねばと改めて感じたエピソードになりました。

このご質問についての回答はシンプルではありません。建物や鉄骨の仕様によって異なるからです。ケースバイケースで解説したいと思います。

長文になってしまったので、ご自分に当てはまる部分(リンク)を中心に読んでみてください。

「床面が全て鉄板」であるケース

鉄骨階段の塗装

階段や廊下の「床部分(足で踏むところ)」が、写真のような鉄板の場合は、塗装だけで補修が済む可能性があります。簡単にいうと「すべて鉄で作られた階段(廊下)」のケースです。

外部鉄骨にとって塗装はコーティングです。見た目を良くする以上の意味があります。

定期的(6年前後)な塗装をしていれば、鉄部に塗装皮膜が付着するので外気や雨水に触れることがほとんどなく、腐食から鉄骨を守ってくれます。

すでにサビが発生している場合でも「ケレン(サビを削り取る作業)」をしてから塗装をすれば鉄骨の耐用年数を効率的に維持することができます。※プロへの塗装依頼をおすすめします。ケレンの技術、塗装の技術、使用する専用塗料で耐久性に差が出ます

「床面がモルタル製」であるケース

外鉄骨の雨水対策コーキングシール

階段の段板や廊下の床面がモルタル(コンクリート)製の場合は雨水対策が必要です。モルタルの経年劣化によって「ヒビ(クラックと飛ばれます)」等が発生すると、そこから雨水が浸入して内部の鉄骨腐食が始まります(厄介なことに内部腐食は目視できないから気づきにくい・・)。

内部の鉄骨が腐食すると鉄骨強度が下がって安全性が落ちます。これが人身事故の元になります。人身事故を未然に防ぐのが雨水対策です。

雨水対策の具体的な工法として「モルタルのヒビ」や「鉄骨のすき間」への雨浸入経路を断つためにシールやパテ(樹脂モルタル)補修をすることがありますが、対応できる範囲は限られます。シールやパテでは暫定的な処理であり、床面全体を保護するまでは及びません。

タキストロン

中長期的な雨水対策としてオススメするのは、床面全体を雨水から保護できるタキステップやタキストロンなどの機能性床材(長尺シート)です。複層シート構造なので、シート表面からの雨水浸入はほぼ皆無。端部のシールを定期的に打ち替えていれば塗布防水やシート防水と同程度の雨水対策が期待できます。コスパにも優れた、近代的な改修方法といえます。

残りの建物維持年数が2~3年のケース

外部鉄骨階段

鉄骨はサビているけど、建物自体がもう残り数年しか使わないというケースでは、大げさな改修工事はコスパに合わないと思います。使っている人が怪我しなければいいので。

このことから、当社の見解としては「塗装も雨水対策も必要ない?」です。

このタイプの外部鉄骨に求められるのは、ただただ安全性です。欠落の可能性がある鉄骨パーツや、段板がグラグラして外れそう・・などの最低限の補強を行っておけば十分ではないでしょうか。(もちろん、オーナー様の運営方針次第です)

残りの建物維持年数が10年前後~のケース

鉄骨階段の塗装とシート工事

塗装も雨水対策も必要です。

塗装は「鉄骨の皮膜(コーティング)」として定期的に塗り替えないと老朽化が進みます。また、雨水対策は塗装とは別問題(コーティング以外の鉄骨腐食の抑止策)として必要です。10年前後~の維持をお考えであれば、ここで鉄骨強度のテコ入れをしておく必要があります。

「塗装」と「雨水対策」は手段と目的が異なります。わかりやすく書くと下記のような役割の違いがあります。

  • 塗装 → 鉄骨に皮膜をつけて外気や雨水から鉄骨を守る手段
  • 雨水対策 → 腐食の要因となる雨水をブロックをして鉄骨劣化を防ぐ手段

ご自宅の鉄骨階段(廊下)のケース

自宅(戸建て)の鉄骨階段

鉄骨設備を使うのがオーナー様だけであれば、ある意味割り切った判断ができるかと思います。

塗装も雨水対策も効果が異なる補修方法であり、どちらも鉄骨の経年劣化を抑止する延命措置です。これらを「費用対効果」あるいは「自己責任」という天秤にかけて補修方法を考えることができます。

とはいえ、私たちのような鉄骨補修の専門業者であれば、的確な腐食ポイントの見極めと、具体的な補修工法をご提案できますので、ご不安の場合はご相談ください。

アパートの鉄骨階段(廊下)のケース

溶接補修工事

アパートやマンションなどの共同住宅では、鉄骨階段や鉄骨廊下は「共有設備」です。入居者様や配送業者さん、郵便局員さんなど、いろいろな方が鉄骨設備を使います。ここで強度不足による人身事故が発生するとオーナー様には大問題になります。

参考:けちけちオーナーさんの悲劇。維持管理と修繕計画 (All About記事)

このことから、ダメージ具合や鉄骨設備の設計によりますが、「塗装?雨水?どちらの補修補法で進めるか」という方向ではなく総合的な補修計画が必要になります。

まとめ

中長期的な設備維持をお考えであれば、「塗装だけ」「雨水対策だけ」では万全ではありません。どちらも「補修の役割(効果)が違うから」です。

こう言うと語弊があるかもしれませんが、「塗装」と「雨水対策」は、お化粧の「口紅」と「アイシャドウ」のように、果たす内容が異なるものです。つまり、「塗装だけもいい?」「雨水対策だけもいい?」という疑問への答えは意味がないのです。「大は小を兼ねる」という発想ではなく、別分野の補修方法であることをご理解ください。

今回は「塗装」「雨水対策」についての記事でしたが、そもそも鉄骨設備の延命には鉄骨補強や補修が前提ですよ。鉄骨設備の延命についてお気軽にご相談ください。