非常階段の現状(鉄骨サビ度:★★★★★)
医療施設の老朽化した非常階段について、当初は建築会社が主体で「階段設備を丸ごと新調」する計画だったのが、急遽、工事予算の減額で「補修で延命」と工事方針が変更になったそうです。そこで、鉄工所の私たちにご連絡がありました。
非常階段の補修方法:
工事予算の減額策となって、足場も立たなくなり、重機(クレーン)も使えないという条件に・・。それってほとんど手作業の補修工事ですよね・・。1階から5階、全部で10基の階段本体だけを連続交換する大変な工事です。
この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。
目次
「新調」から「補修」への工事方針の急展開
医療施設の非常階段です。
もともとの改修工事プランとして「階段設備をそっくり新調する」と、建設会社が主導していた工事プランだったのが、減額案が浮上して、工事方針が「新調」から「補修」に急展開。そこで鉄工所の当社に白羽の矢が立ちました。
お打合せに行ったのですが、いろいろと条件が大変な現場でして・・・。
重機(クレーン)不可NG、足場NGの条件で
階段補修に挑む
こちらの現場では、重機(クレーン)NG、足場NGという条件で「できるだけ延命したい」というご相談。うーむと腕を組みました。
非常階段は段板とササラ桁がサビ腐食が特に進んでいます。しかし、手すりは比較的に強度が残っています。いろいろと試行錯誤した結果、「手すり以外の階段本体を交換」することになりました。
非常階段は5階までの屋外階段。それぞれ個別に交換工事すると階段は全部で10基になります。これらを「重機無し」「足場なし」で行うわけですので、ちょっと気が遠くなりますがガンバリマス。
階段本体だけ交換。既存の手すりは再利用して予算圧縮
補修計画が決まれば一気に工事を進めます。階段本体の撤去と解体作業を行います。
まず、手すりと階段本体を切り離します。手摺を再利用するためです。事前にチェーンプロックで階段本体を吊り上げつつの作業。転落に注意しつつ慎重に工事を進めます。
手すりを残して階段本体だけを撤去した写真です。なかなかお目にかかれない貴重なシーン。
アングルを変えて撮影するとこのような状況です。再利用が可能な手摺が残されて、腐食した階段本体だけを撤去した状態です。
新しい階段の姿が見えてくる
古い階段を撤去したら、いよいよ新しい階段の設置です。まずは交換する新設階段の「ササラ桁パーツ」を接地します。当初の階段角度と合わせて仮溶接(かりようせつ)で固定していきます。
仮溶接とは「かろうじて仮固定できる程度の弱い溶接」です。この状態だとまたガッチリとした固定ではないので、位置の微調整が可能です。
さきほどの「仮溶接」をしながら、反対側のササラ桁も設置。両サイドのササラ桁の間に新しい「段板パーツ」を仮溶接。これで階段本体が仮に組み立てられます。
最後に、既存の手摺と溶接します。それぞれのパーツの位置関係がびしっと決まったところで本溶接(しっかり固定して動かなくなる溶接)を行います。
これが階段本体(手すりは再利用)を交換して補修する流れです。これを10基分・・。
連続!鉄骨階段の交換の流れはこうなった
今回の屋外階段の交換工事の流れは下記のようになります。
(1) 「腐食した階段本体」と「再利用する既存手摺」を分割
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(2)階段本体を解体撤去
↓
(3)新旧階段の交換のための下地補強
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(4)新設階段に交換して仮溶接
↓
(5)「既存手摺」と新設階段を仮溶接
↓
(6)全体の位置調整をして本溶接
↓
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この段取りで1階~5階まで実に10基の階段の交換をしました。いやはや本当に骨が折れましたがオーナー様には喜んでいただけたようです。
また、この工事の小規模版も行いました。下記の工事です。
今回の補修工事の特徴をまとめますと、工事費用を大幅に落とせたポイントのひとつは「手すりの再利用」。手すりは実は製作手間がかかって費用がかかります。
もうひとつは「付帯工事が不要」になったこと。丸ごと交換となれば重機費用や基礎工事、外壁工事などの付帯工事が必要になります。
デメリットもあります。「手作業の労務費が増えること」「延命修理なので強度の確保に限度があること」です。この辺りは費用対効果とのバランスをみながら検討する部分かと思います。お気軽に当社にご相談ください。