この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨階段や鉄骨廊下などの「外部鉄骨」の改修について調べているオーナー様向けです。「補修タイミングの見極め」「鉄部の耐用年数」「鉄部の腐食経緯」など、鉄骨サビに関する予備知識について書いています。
鉄骨階段の改修工事に関する豆知識
建物オーナー様から「住まいの裏にある鉄骨階段がサビて、踏むと外れそうなのですが・・」とご連絡をいただきました。腐食の診断をしたところ、階段の段板はボロボロで再利用は難しそうです。このページでは、実際の改修工事を例にしながら、鉄骨階段改修に関する豆知識を解説していきます。
この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。
目次
「修理するとき」が「使い方再考のとき」
建物の裏で「物置状態」となっていた鉄骨階段。
敷地の中に隠れるように建っている階段なので、人目につかず、また、普段から頻繁に使用をしていなかったので、錆び放置になっていたようです。腐食に気付いて焦って修理業者を探されていたそうです。
「鉄骨階段の修理を、どの業者に頼むのかわからなかった」とのこと。そこでインターネットで当社を見つけてくださったそうです。
実は、鉄骨階段の延命を検討するときは、改めて階段の使い方を考え直す良い機会となります。「階段をどのように使ってきたのか?」「どのように使っていくのか?」です。
階段の用途が見えてくれば、修理の方針が明確になります。その結果「本当に必要な工法」をチョイスができるのです。業者の言いなりになってはいけません。
今回の改修工事では、鉄骨階段のササラ桁(段板を挟む左右のフレーム鉄骨)に強度が残っていたため、ここを基点に補修工事を行いました。ササラ桁は既存のまま再利用して、段板だけを交換しています。そのあとに仕上げ塗装。
鉄骨階段の耐用年数ってどれくらい?
鉄骨階段の耐用年数は立地や使用条件、構造仕様によっても大きく変わってきますが、しっかりメンテナンスをしていれば30年以上もちます。建物と同じくらいの寿命を引き出せます。溶融亜鉛メッキしてある鉄骨階段ならば、さらなる耐用年数が期待できます。
鉄骨の耐用年数についは下記ページもご参考になさってください。
また近年(平成28年)、消費者庁が賃貸物件における「生命に危機をおよぼす不具合の発生」を発表して注意を呼び掛けています。建物に付随する鉄骨設備の腐食についても触れています。
今回の改修工事では「筋交い金物」を増設しています。階段の裏側を対角線に延びる線がわかりますか?このような補強作業をするだけで、鉄骨フレームの強度が向上します。難しい言葉を使うと「座屈(ざくつ)を防ぐ」ことが筋交い金物の役割です。
また、鉄部の塗り替え時期は6年前後を目途に行うのが適切です。鉄部塗装を怠ってしまうと、塗装によってコーティング皮膜が取れて鉄部がむき出しになって、サビ腐食が加速します。
鉄骨塗装の主流となっているのはウレタン系塗装です。従来のSOP塗装(DIYショップで売っている塗料に多い)は耐久性が低く、また耐用年数も短いため、外部鉄骨の塗料としてはお勧めしません。安かろう悪かろう・・です。
段板は錆びてくると、真ん中が「しなってくる」
鉄骨階段のサビ腐食が深刻になってくると、段板が錆びてボロボロになってきます。その影響で鉄板の強度が落ちてきます。
結果的に階段の昇り降りの時に踏まれる「段板の真ん中」を中心にして鉄板が「撓(しな)り」ます。かろうじて段板の両端がササラ桁に接合しているだけで、いつ段板が転落してもおかしくありません。
鉄骨階段の段板崩落の事故は、この現象の延長上にあります。
今回の改修工事では「費用面でのメリット」や「通気性の良さ」などの理由から、蹴上板を使わない、シンプルなジグザグ曲げの段板に変更しました。
階段の踊り場がサビ腐食の起こりやすい理由
工事前の鉄骨階段の踊り場(水平の廊下部分)を見上げています。
踊り場の鉄板の一部が茶色くなってサビが発生している部分がありますね。ここに水たまりができて、集中的に腐食していきます。踊り場のように水平な場所にサビが発生しやすい理由は「雨水が流れず留まってしまう可能性が高いから」です。段板の端部なども同様です。
外部の鉄骨設備にとって「雨水」は天敵です。水ハケを良くする工夫や、雨水対策を施すことが鉄骨の耐用年数を伸ばします。
今回の改修工事では、踊り場の床鉄板を支える骨組みの鉄骨も補強して、床鉄板は新しく交換しました。最後に筋交い金物も増設。これで強度もしっかりします。
多くのケースで外部鉄骨は「延命修理」が可能です
改修工事前の鉄骨階段の全体写真です。
疲れ切った鉄骨階段ではありましたが、「延命」のための鉄骨補修工事は可能です。
平成28年に起こった、北海道の賃貸建物の廊下崩落事故は、鉄骨のサビ補修を怠ってしまった結果です。人的被害を未然に防ぐために補強工事が必要です。建物オーナー様にはぜひ見ていただきたい記事です。
参考:(函館新聞)駆け付けた警官、床抜け転落、負傷
アパートの修繕を怠ってしまったことによる「人的被害」の記事はこちらです。
参考:けちけちオーナーさんの悲劇。維持管理と修繕計画 (AllAbout ガイド様記事)
これまで多くの鉄骨腐食のご相談をいただきましたが、構造部の鉄骨さえ強度が残っていれば、多くのケースで「延命」が可能です。大きな人的事故を回避するためにも、鉄骨設備のメンテナンスをお勧めいたします。
改修工事後の鉄骨階段の全体写真です。
今回の補修工事例と合わせて、鉄骨階段の改修に関する豆知識を解説してみました。
鉄骨階段や廊下などの鉄骨設備改修を考えるときは、建物本体の運用計画を踏まえて検討されることをお勧めします。鉄骨階段を「どこまで修理するか」を見極めましょう。
「交換を考える」前に、「大きな費用をかける」前に、私たち横山鉄工所にお気軽にご相談ください。